西加奈子先生著 サラバの読書レビューです。
単行本では上・中・下巻と続く長編大作です。
「上巻」
上巻を読んだだけでは、物語の全容が見えない。
前半は主人公の家族の話が主で、特に猟奇的な姉の描写が凄まじい。
実体験ではないかと疑うほどです。
後半はエジプトの生活。友人ヤコブとの交流の話に展開が広がります。
このエジプト人の友人のヤコブとの出会いと別れ、言葉は通じないが「サラバ」の言葉だけで
通じ会える関係。
最後に出現したナイルを泳ぐ生物が、
この後のストーリーにどのような展開を見せるのか楽しみです。
「中巻」
主人公の中学生時代から社会人までの人生が語られます。
中巻では、「サラバ」について触れることはなく、
ヤコブの事を思い出すのは、ほぼ無し。
物語で度々姉の事を毛嫌いし、傷ついても良い存在と思っている主人公に対し、
若干違和感を覚えました。
姉は上巻に続いて引き続き猟奇的な存在。
巻貝の造形を纏い、街に出没。
この巻貝の造形が何を意味すのか?
主人公が思うように、単に「人の視線を集めたい」だけなのか?
もう少しお姉さんの考えや思いに耳を傾けても良いのになとも感じつつ。
なにか深い意味が隠れてそうで、波瀾万丈の展開ではありますが、
中巻では、まだまだ物語の中核には迫っていない。
下巻の展開が楽しみです。
「下巻」
上巻を読んだときはファンタジーとなるのかと感じ、
中巻では人間ドラマかと勝手なカテゴライズをしてました。
最後下巻を読み、この物語が哲学的でもあり、文学的でもある内容と気付きました。
お姉さんの言葉
「芯を持ちなさい、歩」※歩は主人公の名前
「あなたは誰かと自分を比べて、ずっと揺れていたのよ」
は、芯がない私自身の心にも突き刺さる。
人種も宗教も言葉も超えた信じるべきものが「サラバ」という言葉で具現化されてます。
主人公は頭がハゲてそれに気付けた。
人は満たされていると感覚が鈍り、飢えると感覚が研ぎ澄まされていくのだと
改めて痛感しました。
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